RSIとRCIの使い方・覚え方
テクニカル分析において、過熱感や方向性を測る指標として広く活用されているRSIとRCI。この二つの指標は似ているようで異なる特性を持ち、使い分けることで相場分析の精度を高めることができます。本稿では、RSIとRCIそれぞれの特徴、使い方、そして効果的な覚え方を解説します。
RSI(Relative Strength Index:相対力指数)
基本概念
RSIは、一定期間における上昇幅と下落幅の比率から算出される指標です。相場の「強さ」を0〜100の数値で表し、買われ過ぎ(overbought)や売られ過ぎ(oversold)の状態を判断するのに役立ちます。
計算方法
RSI = 100 - (100 / (1 + RS))
RS(相対力) = 一定期間の上昇幅の平均 ÷ 一定期間の下落幅の平均
一般的には14日間を期間として使用しますが、短期であれば9日、長期であれば25日などの期間設定も可能です。
判断基準
- 70以上:買われ過ぎ(天井圏)→ 売りシグナル
- 30以下:売られ過ぎ(底値圏)→ 買いシグナル
- 50:中立(上昇・下降トレンドの境界線)
RSIの特徴と覚え方
- Relative Strength Index → 「相対的な強さを示す指標」
- 価格変動の幅に注目する指標
- 上昇・下落の勢いを測定
- 短期間の過熱感に敏感
- 数値が高いほど強気、低いほど弱気
実践的な使い方
- リバウンド・押し目買い:
- RSIが30以下になったら買いを検討
- ただし、強い下降トレンド中は複数回30を割り込むことがあるため注意
- 利食いタイミング:
- RSIが70以上に達したら利食いを検討
- 強い上昇トレンド中は70以上の水準が継続することもある
- ダイバージェンス(乖離)の確認:
- 価格が高値更新しているのにRSIが前回高値より低い → 「ネガティブダイバージェンス」で天井のサイン
- 価格が安値更新しているのにRSIが前回安値より高い → 「ポジティブダイバージェンス」で底入れのサイン
- トレンド判断:
- RSIが継続的に50以上を推移 → 上昇トレンド
- RSIが継続的に50以下を推移 → 下降トレンド
RCI(Rank Correlation Index:順位相関係数)
基本概念
RCIは、現在から過去までの一定期間の株価(終値)の推移と、時間の経過(日数)との相関関係を示す指標です。数値は-100〜+100の範囲で表され、トレンドの転換点を見極めるのに有効です。
計算方法
RCI = 1 - (6 × Σd² / (n³ - n))
ここで:
- d:株価の順位と時間順位の差
- n:計算期間
一般的に、短期は9日、中期は26日、長期は52日で計算されます。
判断基準
- +80以上:買われ過ぎ(天井圏)→ 売りシグナル
- -80以下:売られ過ぎ(底値圏)→ 買いシグナル
- 0付近:トレンド転換の可能性
RCIの特徴と覚え方
- Rank Correlation Index → 「順位間の相関を示す指標」
- 価格の順位変化に注目する指標
- トレンドの強さと方向性を測定
- トレンド転換の検出に優れている
- +の値が大きいほど上昇トレンドが強い、-の値が大きいほど下降トレンドが強い
実践的な使い方
- トレンド転換の検出:
- RCIが+80から急落、または-80から急上昇した場合、トレンド転換のサイン
- 特に0ラインを突き抜ける動きは注目すべき
- 複数時間軸での確認:
- 短期(9日)、中期(26日)、長期(52日)のRCIを併用
- 全てのタイムフレームが同じ方向を示すとき、強いシグナル
- ダブルボトム・トップの確認:
- RCIが二度続けて-80や+80に達し、その後逆方向に動く場合はW底やM天井のパターン
- 他の指標との併用:
- RSIとの組み合わせで、より精度の高い判断が可能
- 移動平均線やMACD等と組み合わせると効果的
RSIとRCIの違いと使い分け
主な違い
特徴 | RSI | RCI |
---|---|---|
数値範囲 | 0〜100 | -100〜+100 |
注目点 | 上昇・下落の幅 | 価格の順位関係 |
得意分野 | 過熱感の検出 | トレンド転換点の特定 |
反応速度 | やや速い | やや遅い(特に長期RCI) |
判断基準(買われ過ぎ) | 70以上 | +80以上 |
判断基準(売られ過ぎ) | 30以下 | -80以下 |
覚え方のコツ
- 名前で覚える:
- RSI:Relative Strength → 「相対的な強さ」「上げ下げの強さ」
- RCI:Rank Correlation → 「順位の相関」「時間との関係」
- 範囲で覚える:
- RSI:0〜100 → 「パーセントで表現」
- RCI:-100〜+100 → 「相関係数で表現」
- 使い方で覚える:
- RSI:過熱感を見る → 「熱Si(しぼり)」
- RCI:転換点を見る → 「転換Chance(チャンス)」
実践的な活用戦略
両指標を組み合わせた売買戦略
- ダブルボトム戦略:
- RSIが30以下、RCIが-80以下で底打ち形成
- その後両指標が上昇転換したら買いシグナル
- トレンドフォロー戦略:
- RSIが50を上回り、RCI(26)が0を上抜けたら上昇トレンド継続のサイン → 買い
- RSIが50を下回り、RCI(26)が0を下抜けたら下降トレンド継続のサイン → 売り
- ダイバージェンス確認戦略:
- 価格が高値更新するも、RSIとRCIの両方がダイバージェンスを示した場合は強い売りサイン
- 価格が安値更新するも、RSIとRCIの両方がダイバージェンスを示した場合は強い買いサイン
時間軸別の活用
- 短期トレード:RSI(9)とRCI(9)を主に使用
- スイングトレード:RSI(14)とRCI(26)を主に使用
- 中長期投資:RSI(25)とRCI(52)を主に使用
まとめ
RSIとRCIは、似ているようで異なる特性を持つテクニカル指標です。RSIは相場の過熱感を測るのに適しており、RCIはトレンド転換点の特定に優れています。
これらの特徴を理解し、それぞれの長所を活かして組み合わせることで、相場分析の精度を高めることができます。また、単独での使用よりも、複数の時間軸や他の指標と併用することで、より信頼性の高いシグナルを得ることができるでしょう。
初心者の方は、まずRSIから使いこなし、慣れてきたらRCIも取り入れていくというステップが効果的です。テクニカル指標は「万能」ではなく、あくまで投資判断の「補助ツール」として活用することが重要です。