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[書き起こし・要約]アイサンテクノロジー(4667)IRセミナー・質疑応答 2024.6.3  名古屋開催

2024.6.3に開催致しましたアイサンテクノロジー(4667)IRセミナー&質疑応答の書き起こしになります。

登壇者名 代表取締役社長 加藤 淳 様

IRセミナー

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皆さん、こんばんは。
ただいまご紹介いただきました、アイサンテクノロジーの加藤と申します。
本日は、大変お忙しい中、また週始めの月曜日にもかかわらず、私どもの決算説明会にお越しいただき、誠にありがとうございます。

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それでは早速ではございますが、お時間90分いただいている中で、最初の30分から35分ほどは、私どもの会社のご紹介と前期の決算概要をお伝えさせていただき、また4月からスタートした新しい中期経営計画の概要をご説明いたします。その後、質疑応答に入っていきたいと思います。
お時間90分ではございますが、最後までお付き合いいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

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本日のお話の内容は、会社紹介から質疑応答までを予定しております。
おそらく今日お越しの皆様方の中には、私どもの会社を初めて知り、そういう会社があったのかと思われた方もいらっしゃるかと思います。
事業内容とビジネスモデルについては、簡単な3分程度の動画を2本用意させていただいておりますので、私どもがどのような仕事をしてきたのかをご覧いただけると幸いです。

会社紹介

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早速ではございますが、会社紹介に入らせていただきます。
社名からグループ会社の関連まで、このように記載させていただいております。

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創業は1970年8月で、この4月で事業年度としては55年を迎えております。
もともと測量関係のソフトウェアを開発・販売するビジネスモデルを55年続けており、その技術の派生から、3次元データを取る新しい計測機器の登場により、10年ほど前から自動運転の分野に参入しました。
車の地図データ生成や自動運転実現のための車両構築コンサルタント、さらには自動運転の社会実装に向けた様々な実証実験に参画し、いち早く社会実装に向けた取り組みを行っております。

主な取引先としては、創業時からの測量関係のソフトウェアをご利用いただいている企業様が中心です。

測量会社様、建設コンサルタント業のお客様、そして不動産登記に係る法務省関係の法務局に財産登記をされる際に必要な国家資格を持った土地家屋調査士の方々も、私どもの製品やソリューションを日夜ご利用いただいております。
また、車関係・地図関係の自動運転に関連する様々なお取引先とお付き合いをさせていただいております。

グループ会社として4社ございます。
スリードは主にモービルマッピングシステムを用いて、走るだけで極めて高精度な3次元地図データの基礎データを計測する専門の会社です。
三和は創業50年近い歴史を持つ測量会社で、特に基本測量業務を得意としており、国土交通省国土地理院の監督下にある非常に高い精度を要する基準点測量を行っています。

A-Driveは昨年2月に三菱商事様との出資により創立した新しい会社で、自動運転に関する社会実装に向けた様々な取り組みを、特に全国の自治体様や交通事業者様に向けて具体的にご提案し、営業活動を行うシップ的な役割を担っています。

最後に秋測は、測量で使用する計測機器の販売とメンテナンス・リペアを行っており、高い技術力を持っています。今年1月よりグループ会社となり、シナジーを創出していく予定です。

このように、単なるソフトウェア開発・販売だけでなく、関連するハードウェアや最新ソリューションを組み合わせた提案を幅広く市場に行っているという点を理解いただければ幸いです。

事業内容(ビジネスモデル)

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事業内容とビジネスモデルについて、当社では大きく分けて2つのセグメントに区分しています。

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1つ目は緑のカテゴリーの公共セグメント事業です。ここでは創業以来の測量関連ソフトウェアとそれに関連する計測機器・ハードウェアを中心に、北海道から沖縄まで日本全国で販売しています。営業拠点も仙台から宮崎まで全国16カ所ほどに展開しており、日夜営業活動を行いながら収益拡大を図っています。

2つ目はモビリティセグメント事業で、自動運転を中心とした仕事をしているセグメントです。主にモービルマッピングシステムを用いた高精度3次元地図データの生成・販売、自動運転関連車両の構築、社会実装に向けた様々なコンサルティングなどの自動運転ソリューションが中心となっています。

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公共セグメントでは、高精度で信頼性の高いスイスのライカジオシステムズ社の計測機器を販売しています。これらの機器から得られた測量データを、当社の様々なソフトウェアソリューションで処理し、位置情報を出力して目的の設計図面を作成し、最終的な出力まで手掛けることができます。始まりから終わりまで全てをトータルでソリューションできるソフトウェアです。

全国の測量会社様、検証会社様、建設コンサルタント会社様、建設会社の一部様、そして土地家屋調査士の先生方が、これらのソフトウェアと計測機器を使って目的の成果物を作成しています。非常に稼働率が高く、人気のオフィスソフトと同等以上の稼働率を誇ります。

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モビリティセグメントでは、主に4つの枠組みで事業を進めています。

  1. 自動運転の社会実装に向けた実証実験を通じて様々な課題解決に取り組む

  2. 車両構築、特に働く車シリーズ(除雪車など)の自動運転化

  3. 高精度3次元地図データの作成と提供(全国の高速道路約3万kmのデータを保有)

  4. モービルマッピングシステムによる高精度3次元地図データの元となる点群データの取得(2009年頃に登場)

働く車シリーズの自動運転化では、人手不足や高齢化の問題を抱える除雪車などを対象に、高精度な位置情報と地図データを使った自動運転の取り組みが活発化しており、実装が近づいています。

高精度3次元地図データは、当社の測量関連テクノロジーから自動運転という新しい世界へ踏み出すことができた重要な要素です。このデータをベースマップとして、自動運転技術を実装した車両の安全走行を実現しています。

2008年か2009年頃に、当社の株主でもある三菱電機様が開発したモービルマッピングシステム(MMS)の国内代理店を当社が務めることになりました。当初は車も含めて1億円を超える高額なシステムで、市場を作ることから始めました。

2015年の東京で開催されたITS世界大会で、当社もMMSと関連するソフトウェアソリューションを出展したところ、自動車業界の方々から高い関心を得ました。自動車の自動運転の基礎情報としてMMSで取得したデータを使えないかという問い合わせが多数寄せられ、具体的な活用方法を検討した結果、今日に至っています。

現在、当社は年間6~7台のMMSを販売しており、これまでに手掛けたMMSは全国で80~90台に上ります。

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トピックとして、経済産業省と国土交通省が連携し、2025年までに全国50~100ヶ所で自動運転サービスを展開する「RoAD to the L4」の取り組みが活発化しています。特に2024年から2026年の3年間は、社会実装に向けた重要な期間になると見込んでいます。当社も限られたリソースを有効活用し、この分野に注力していきます。

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昨年度は、国土交通省等の採択事業62ヶ所のうち15ヶ所に参画し、特に平塚市、常滑市、北九州市での実証実験で大きな成果を上げました。

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平塚市では大型バスを使った通勤・通学での実証実験を行い、市民の足として欠かせない存在であることを実感しました。

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常滑市でも安全に運行できることを確認し、北九州市ではMaaSアプリと連携した実証実験で、気象条件などの課題を見出すことができました。

第54期決算報告[2024年3月期]

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54期(前期)の決算では、売上高55億円弱、営業利益4億5000万円強という結果になりました。前々年比で売上高は10億円、営業利益は1億円以上増加しましたが、目標には若干届きませんでした。セグメント別では、公共が利益面で苦戦した一方、モビリティは大きく伸長しました。物価高などによるコスト増を吸収し、営業利益は4億5000万円弱を確保しました。

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3ヶ年の中期経営計画「インベストメント&イノベーション」の最終年度である54期は、売上・利益ともに目標未達の結果でしたが、次期中計で挽回したいと考えています。セグメント別の3年間の推移を見ると、モビリティの成長が顕著であることがわかります。

55期〜57期:中期経営計画

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では次に、新しい中期経営計画として、55期から57期(2025年3月期から2027年3月期)の3年間の数字をご説明させていただきます。

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まず、スローガンとして「デベロップメント&エボリューション」を掲げ、この3年間は新しいソリューションや製品を計画通りに作成し、確実にリリースしていくことに一番注力します。既存の測量事業と新たな自動運転事業の両方で大きな成果を上げ、この3年で新しいアイサンテクノロジーへの進化を遂げたいと考えております。

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世の中を取り巻く環境も変化する中で、昨年3月には資本コストや株価を意識した経営への取り組み、社会全体のデジタルトランスフォーメーションによる業務革新、人的資源の有効活用など、新しいテーマが出てきています。これらを一つ一つ解決・対応しながら、3年後には新しい姿にリニューアル・進化していきたいと考えております。

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目標の経営数値としては、3年後の売上高80億円、営業利益8億5000万円、売上高営業利益率10%を目指します。決して簡単な目標ではありませんが、これまでの測量事業と新たな自動運転事業の伸びしろを組み合わせながら、数字の達成を図っていきたいと考えております。

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特に、最終年度の57期(2027年3月期)には営業利益8.5億円を達成し、新しいものを確実にリリースしながら、会社全体・グループ全体で現在より1ランク上のステージにアップデートすることを目指すことを狙っています。

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お客様視点という点では、特に公共セグメント事業において、建設関連産業・測量関係では少子高齢化、特に高齢化による技術者継承の問題が年々クローズアップされてきています。一方で、戦後に作ってきた社会インフラの老朽化も進んでおり、メンテナンスが必要不可欠となっています。人材確保と不足している部分を新しい技術やソフトウェアソリューションで解決していく上で、お客様視点・顧客視点は欠かせません。この点を原点に立ち返って取り組んでいこうと考えております。

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自動運転関連事業については、ここ2年ほど株主総会等でもよく質問を受けるのが、収益化(マネタイズ)、つまりいつ頃お金に変わってくるのかということです。この点については、いよいよこの3年間が収益の柱にしていくための基礎となる期間だと予想しており、ここを具現化していくことが大事だと考えております。

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最後に、本来であれば投資家の皆様ときちんと接点を持ち、お話をさせていただいたり、いろいろなお話を聞かせていただくことが必要ですが、なかなか細かいところまで手が届いていませんでした。

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しかし、今期からはそのための組織を設け、組織だけでなく社内からの人材登用と、その方面に強い人材の確保を図りながら、広報活動のステージを一つも二つも上げていこうと考えております。

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そういった取り組みから、先ほど申し上げたように、売上高営業利益率10%、ROE8%、配当成功率35%という数字を目指します。また、現在190名弱の人員をグループ全体で240名弱まで増やしていきたいと考えております。

この3年間、数字を取りながら、公共セグメントとモビリティセグメントそれぞれで具体的に定めたことを一つ一つクリアしていくことを事業として展開してまいります。

また、新しい事業として、高精度3次元データの利用可能性を具現化し、当社のソリューションとして世の中に提供していくことも、この3年間のスタートになります。3年後には、この新事業がしっかりと立ち上がっている姿を思い描きながら取り組んでいきたいと考えております。もちろん、ここではグループ全体のシナジーを取ることが大前提となります。
公共セグメントでは、方針、行動目標、成長分野に対して売上高、営業利益まで取っていく予定です。特にICTやテクノロジーを活用して人員不足や技術者不足を補いながら、業界全体を盛り上げていく動きが活発になってきます。

また、最近法務省が力を入れているのは所有者不明土地の問題です。空き家対策で誰が住んでいるのか分からない土地が、以前は九州全土ぐらいと言われていたのが、今は北海道でも多いと言われるほど点在しています。これを解決していかなければならないのは、今後当社にとって大きなテーマだと捉えており、最新の計測機器やソフトウェアソリューションが求められると判断しています。

モビリティセグメントでは、自動運転社会の実装を中心に、しっかりとした形で収益に変えられるよう頑張りたいと考えています。

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東証等からの要請で、資本コストや株価を意識した経営、PBR、ROIC、PERの改善等、具体的な指標を定めながら、この3年でしっかり現行より上がるよう努めたいと考えています。

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大きな3つの方針の中で、まず収益面では3年後に営業利益8.5億円を確実に取れるよう、体制づくりと製品開発に注力します。これをやり切れば、2番目の点は自ずとついてくると考えています。

最後の広報・IRの強化は、人材登用と教育、新たな人材確保の2本柱で対応したいと考えています。

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人員を増加・確保していくと、それに伴って売上高や利益もついてくると考えています。初年度となる今年は、中期経営計画「デベロップメント&エボリューション」の中で、人員確保に力を入れて取り組んでいく予定です。

以上、中期経営計画等を含めた1番から4番までのご説明とさせていただきました。ありがとうございます。

質疑応答

Q. 測量土木は男性メインの世界ですが、その中で女性採用を積極的に推進していくと中計の中でもありました。女性の方はどのような分野やセグメントで活躍されているのでしょうか。
A. 現在では公共セグメントもモビリティセグメントも女性が活躍しておりますが、人員数としてはモビリティセグメントの方が多いです。仕事内容としては、自動運転の社会実装に係る実証実験のコンサルタント業務や、公共セグメントではインフォメーション等のヘルプディスク業務などがあります。もちろん営業を担当している女性メンバーもおり、あらゆるところで活躍しています。

Q. 先日日産が自動運転車を公開しましたが、日産にもアイサンテクノロジー様のソリューションが使われているのでしょうか。
A. 具体的な会社名は秘密事項保持の関係でお答えしにくいのですが、2015年のITS世界大会に出展した後から、日産さんとは研究用データや実証実験データ、3次元地図データの作成などで個別にお仕事をさせていただいている実績がございます。

Q. 自動運転に関して、特にアメリカの企業が測量関係で開発を進めていると聞きますが、そういった企業に対抗できるのでしょうか。
A. 自動運転市場は壮大な規模で動いているので、一社だけでは厳しい状況だと思います。リスクアセスメントを含めて様々なパートナーと協業しながらやっていくのが大きな方向性だと捉えています。アメリカではAI関係を中心に動きがある一方、日本では法整備等の事情も違います。地域に合った自動運転の社会実装やソリューションを提供していくことで強みを出せるのではないかと判断しています。

Q. 中期経営計画で大幅な増収を計画されていますが、どのようなお仕事や顧客が増えて増収になるとお考えでしょうか。公共とモビリティでそれぞれ違うと思いますが。
A. 公共セグメントでは、3次元データを取得・加工して成果物を作る動きが強くなってきているので、既存および新規のお客様を皮切りに増収を見込んでいます。また、今年8月にリリース予定の新製品への高い評価も期待できます。モビリティセグメントでは、2025年までに全国50~100ヵ所で自動運転サービスが展開される目標に向けた実証実験等の取り組みに大きな伸びしろがあると考えています。

Q. モビリティ事業で24年3月期に売上・利益が大幅に伸びましたが、どのような要因があったのでしょうか。
A. モビリティの伸びの大きな要因は、62ヵ所の実証実験のうち15ヵ所を受注し、こなした数が増えたことです。また、3次元地図データの生成・販売も安定的な需要を確保できています。利益面では、社内の地図データ作成における技術革新に注力し、良いパートナーにも発注しながら全体的なコストダウンを進めてきた結果だと見ています。コスト低減は命題であり、ソフトウェアを使った技術で日々改善を続けていきます。

Q. 若宮大通りでの実証実験には多くの企業が参画していましたが、この後どのように展開していくのでしょうか。
A. 若宮大通りで得られたデータや経験値は、新しい社会実装をやっていく上で利用されていくと思います。そういう意味で、ますます精度が上がっていくのではないかと判断しています。

Q. 季節変動が大きい会社だと思いますが、第4四半期に売上・利益が集中する要因は何でしょうか。取引先の影響でしょうか。
A. ご指摘の通り、当社は第4四半期に極めて傾注する傾向にあります。これはお取引先の関係もありますし、公共セグメントの建設関連産業は年度末に集中する性質があるためです。第4四半期に集中するのは私も心臓に悪いので、この3年で少しでも第1四半期から均等に行けるよう組み替えをしたいと考えています。ただ、お取引先の関係で簡単にはいかないかもしれませんが、少しでも組み替えを進めたいと思います。

Q. 自動運転における事故発生時の責任の所在や訴訟リスクについて、法整備が追いついていないと思いますが、どのようにお考えでしょうか。
A. ご指摘の通り、自動運転におけるリスクの所在をどこで引くかという議論は活発に行われており、今後ガイドラインが出てくると思います。自動運転に限らずビジネスにおいては訴訟リスクは大なり小なりありますので、そういった知見も含めて全体的な対応を取れるのではないかと判断しています。当社では自動運転の実証実験を行う前に必ずリスクアセスメントを入れ、問題やリスクを顕在化させた上で計画を立て、速やかに実施しています。その積み重ねが大きな財産になると期待しています。

Q. 測量分野で、公共測量やドローン測量などの分野への参入はお考えでしょうか。
A. 公共測量とドローン空撮等の測量については、必要な機材も全てスタンバイしており、いつでも対応できる状況にあります。実績もございます。公共測量はグループ会社の三和が非常に強く、高い技術で提供できると思います。ドローンについては、グループ会社のスリードが最新機器を用いて行っています。商用ベースでUAVドローンが一番使われているのは測量分野だと思います。国土地理院のマニュアルにも組み込まれ、市民権を得ている測量技術の一つになっています。

Q. 御社のソフトと福井コンピューターのブルーフェンドとの差別化はどういったところにありますか。
A. 当社のシステムと福井コンピューターのブルートレンド(現トレンドワン)は全くオーバーラップしたシステムになっています。結果は同じですが、結果を導き出すプロセスのステップ数が当社の方が少なく、処理スピードは圧倒的に速いと思っています。また、当社は測量の計測機器から最終成果までの全体をサポートしているので、お客様からは測る時から成果を作るまで全てを任せられると安心いただけるのではないかと考えています。

Q. コスト競争力はどうでしょうか。
A. コスト競争力は何を基準に測るかによって変わってきますが、当社の方が少し分があるかなと思っています。

Q. 自動運転について、平塚市などでは実用化しているのでしょうか。
A. 実用化はまだしていませんが、実際にお客様を乗車させて走らせる実証実験は行っています。技術的には可能な領域に達しており、具体的に実装できるレベルに近づいています。ただ、場所ごとに障害物や人の動きなどの条件が異なるため、それぞれのケースに対応していくことが大事だと判断しています。

Q. 高速道路や自動車専用道路では、自動運転は技術的に可能だと聞いたことがありますが、本当ですか。
A. 一般道と比べて、高速道路の方が専用道路であるため導入のハードルは下がると思います。新東名で100kmほどの専用レーンを作るという話もあり、非常に面白くなってくるのではないかと思います。

Q. 2015年に株価が急激に上がったのは、自動運転がブームになったことが要因でしょうか。
A. 2015年の東京ITS世界会議でMMSを引っさげて出展した際、高い評価や期待が集まりました。その後、実際に一般道での自動運転の実証実験を行い始めました。東京オリンピック招致決定によるアベノミクスの盛り上がりの中で、自動車メーカーがレベル4の自動運転車の販売計画を発表するなど、全体的に押し上げられた印象があります。

Q. モビリティセグメントについて、実証実験の内容はバスばかりだと認識していますが、今後トラックなどの荷物を運ぶ車への採用や実証実験の予定はありますか。
A. 昨年、中型バスやEVバスシステムを導入して実証実験を行いました。トラックについても、いずれかのタイミングで対応していくことになるだろうと判断しています。また、大型モビリティだけでなく、グリーンスロー(時速30km以下で走行する低速車両)なども面白いテーマになってくるのではないかと見ております。

Q. 国が目標とする自動運転の公共交通の社会実装50~100ヵ所について、アイサンテクノロジーはどのように参画していく予定でしょうか。また、車両の提供や自動運転化のための改修などにも関わるのでしょうか。
A. グループ会社のA-Driveを中心に、自治体や交通事業者に自動運転の社会実装を提案していくことが、伸びしろのあるところだと判断しています。一社だけでは実現できないので、保険会社、機材提供会社、当社のようなソリューション提供会社などをうまくコーディネートして提案していきます。
車両提供については、協力会社やパートナー企業と連携しながら、センサーやカメラの選定などを行っています。また、株主の三菱電機は準天頂衛星みちびきに関わっており、その高精度な位置情報を活用したコンサルティングやアドバイスも可能です。当社も定款を変更し、そういった車両も販売できるようになっています。まだ課題は多いですが、一つ一つ解決していくことで働く車シリーズの可能性が広がるのではないかと期待しています。

Q. コンサルティング事業で収益を上げていくとのことですが、直接利益を取りに行くのが難しいのではないかと想像します。その辺りはどうでしょうか。
A. 現状でやらせていただいているところから眺めれば、そんなに悪くはならないのではないかと判断しています。べらぼうな利益率があるわけではないでしょうが、そこそこ期待できる程度のものはもらえるのではないかと思います。あとは数をこなすことが重要で、そのためにどういう体制を引いていくかが大きなテーマになります。特に中期計画の初年度で計画通りに人材を確保し、早めに教育して投入していくことが、2年目、3年目の成果に効いてくると考えております。

Q. 新しい技術開発にあたって、産学連携をどのように考えているのでしょうか。また、AIやインフラの分野で中国や米国が先行している中、海外企業との連携についてはどのようにお考えでしょうか。
A. 産学連携については、特に自動運転関係で様々な大学と力を合わせながら、ソリューションのヒントとなる技術要素を作ってきた実績がございます。
海外企業との連携、特に中国企業との連携については、知的財産的なリスクもありますので、知見のある方々からアドバイスを頂戴しながら、機会があれば検討させていただこうと考えております。ただ、現時点で積極的に中国でパートナーを探す時期ではないと判断しています。

Q. 今後、Tier4社とどのようなシナジーを想定していますか。また、Tier4社への出資金額や上場の意思、協業関係について教えてください。
A. Tier4社は創業以来、出資や技術的な交流、実証実験等を通じて共にスクラムを組んできた極めて大切なパートナーです。彼らの成長の一助となるべく、当社も役割を果たし、関係をより強固にしていくスタンスで役員一同一致しております。
Tier4社が会社をどういう形に持っていくのか、IPO等については私からコメントする立場ではないため控えさせていただきます。
Tier4社はますます活発な事業展開をされていますので、当社も置いていかれないようについていって頑張りたいと考えています。

Q. Tier4社が11月からロボタクシー事業を開始するようですが、アイサンテクノロジー社は参加されないのでしょうか。また、収益への影響はあるのでしょうか。
A. 秘密保持事項に関わるため、お答えは控えさせていただきます。

Q. ライバル企業はどのようなところになりますか。また、現在の市場シェアはどのような状況でしょうか。
A. モビリティセグメントの事業は、これから市場が作られていく段階なので、占有率などの話はこれからになります。
公共セグメントでは、福井コンピューター株式会社が昔からのコンペジターです。シェア的には彼らの方が少し多いかもしれませんが、お互いで得意分野も変わってきているので、良いライバルとして切磋琢磨していきたいと考えています。

Q. 自動運転の収益が今後大きくなると思いますが、報道では高精度・三次元地図を使わない方式の話もあります。高精度・三次元地図を強みとして展望している中で、使わない場合の心配についてお聞かせください。
A. 中国やアメリカではAIやロボティクスを使って地図なしで自動運転ができるという話もありますが、同じような話が何度も出ては変わるという体感があり、最終的には地図が必要という方向性かと見ております。ただ、AIが普及する時代に入ってきますので、地図環境を作るコストや新たな地図の使い道、データ生成は大切なポイントだと判断しています。

Q. ヤマハのグリーンスローモビリティは過疎地や観光地、都市部の狭い道路でも有効と思いますが、販売店としてどのような展開を考えていますか。日本での引き合いは強いと感じていますか。
A. 日本での引き合いは非常に高く、観光地等を含めて低速で安全に走行できる場所での利活用は大きな展望があると見ています。昨年、グリーンスローモビリティの販売店をすることを開示しましたが、新しい中期計画の3年間で一つのプロットとしてしっかり売っていきたいと判断しています。移動体としてのニーズはあると考えています。

Q. 会社の社名の由来は何でしょうか。子会社にスリードやサンワなど3に関係する名前が目立ちますが、アイサンに関係するのはなぜでしょうか。
A. 37年前に当時の株式会社アイサンに入社した際、当時の社長に理由を聞いたところ、創業が3人で始まり、愛する3人で頑張っていこうということでアイサンと付けたそうです。この話を聞いた時、なるほどと腹落ちしたのを覚えています。スリードとサンワは偶然ですね。

Q. 高速道での自動運転は条件としては非常に良くなったと思いますが、現状どのような問題が考えられるでしょうか。
A. 専用レーンを自動運転カーだけが走るのではなく、実際に走る際にどうなるかというのが今後のテーマになってくると判断しています。全てが自動運転カーなら良いのですが、そうではないので、そこをどう解決していくかがテーマだと考えています。

Q. 日本郵政様との自動運転提携の進捗を教えてください。
A. 詳細は申し上げにくいのですが、2018年に東京都内で実証実験をさせていただきました。日本郵政様もドライバー不足の課題を抱えていらっしゃいますので、物流業者として今後の動きを見ていかなければならないところだと判断しています。

Q. 公共セグメントの利益率を福井コンピューターの利益率40%並みに持っていくことは可能でしょうか。
A. 不可能ではなく、十分にそこに近づけられる可能性は持っていると判断しています。自社でしっかり製品を作り、計画通り販売していくことが一番のポイントです。福井コンピューター様は測量計測機器などのハードウェアはほとんど手がけていないので、そこは組み合わせが少し違うと見ています。

Q. 中計で増員していくとのことですが、どこの会社も採用に苦労しているという話は多々あります。御社の採用計画は順調に進むとお考えでしょうか。今期や前期で苦労したことはありますか。
A. 人材採用は、特に東海地区ではキャリア・新卒ともに大変です。日本を代表する会社が君臨しているため、本当に大変ですが、あらゆる術を使って取り組んでいます。新卒では専門の会社のご協力をいただきながら、学校周りも足を運び、友人知人のネットワークも活用しながら採用に努めています。ここが軌道に乗ることが中計の肝だと判断しています。前中計では初年度に思うようにいかなかったことが3年間足を引っ張る要因の一つでした。楽ではありませんが、なんとかしっかりやっていきます。

Q. 公共セグメントで従業員を大幅に増やす予定ですが、将来の自動運転サービス展開のためにモビリティセグメントに注力して増やすのでしょうか。公共セグメントではどのようにしていくお考えでしょうか。
A. 両方に注力します。また、当社は2005年以降、採用活動を抑制していたため、35歳から45歳くらいの年齢層が薄くなっている実情もあります。こういったところも対応していかないと問題が出てくるので、そのことも考慮しながら採用活動を行っています。

Q. 一般財団法人塩尻市振興公社に自動運転小型EVバスを販売したとのことですが、具体的な価格はどのくらいでしょうか。価格が高すぎると普及の足かせになると思いますが。
A. 個別案件のため詳細は控えさせていただきますが、安いものではなく、なかなかの値段にはなると思います。

Q. 自動運転仕様のいすゞ自動車のエルガを御社で製造・販売することを行うのでしょうか。それとも販売仲介の実施なのでしょうか。また、1台あたりの収益はどれくらいになるのでしょうか。
A. 販売は手掛けていく考えですので、そのための人員等も含めて手当てしながら取り組みたいと判断しています。収益面については、これからついてくるかなと見ていますが、具体的な金額についてはお控えさせていただきます。

Q. BIM推進がトレンドですが、WingEarthなどのデータ処理ソフトについて、これまでの売上推移、今後の目標販売見込み、または収益性について教えてください。
A. WingEarthは点群データ処理に非常に最適なソフトで、お客様からも高い評価をいただいています。販売は計画通りに推移しており、前期は若干落としましたが、概ね見通せる状況です。加えて、新たにWingEarthの兄弟的な製品も導入しますので、その効果は今後期待できると判断しています。

Q. 2027年までの自動運転需要の伸びと比べて、2028年から2030年はさらに指数関数的に伸びると思われますか。2028年以降のモビリティセグメント事業は今よりも大きくなると予想していますか。
A. 2027年以降も伸長を続けていくと見ています。そのためには、今の中期計画の3年間でやりきれるかどうかが鍵になります。この3年間をしっかりやることが、2027年以降につながるものと確信していますので、この点に注力していきたいと判断しています。

Q. どこの会社でも社員の紹介や専門の会社を使って採用を頑張っていますが、それと同じであれば、アイサンテクノロジー様はどこを利用して採用活動をされているのでしょうか。
A. 当社の社風や文化は、極めてフランクで、年齢や性別を全く意識せず、共に一緒にやろうという精神やワンチーム的な気持ちが非常に強いです。こういった点を人事のスタッフ含め全面に出して採用活動を行っているところが大きいと判断しています。

Q. 地図関係の上場企業といえば、神戸の会社でドーンという上場企業がありますが、こちらはアイサンテクノロジー様とライバル関係になっていませんか。
A. ドーンさんは地理情報システム(GIS)の専門におやりになられている会社だと存じますので、私どもとのコンペというよりは、むしろGISシステムにデータを流していくという関係があると思います。

Q. 三菱商事との連携で自動運転社会に向けた加速やシェア拡大というのは、どの程度見込んでいますか。
A. 三菱商事さんは日本を代表する会社様で、特にモビリティ関係ではコネクションを多々お持ちです。そういったところをAドライブを筆頭にうまく組み合わせていけば、非常に面白いビジネスが出てくるのではないかと期待しております。ただ、会社の規模が大きく違うため、しっかりついていく覚悟が必要だと考えています。

Q. 社長様から見た今の株価はどのようにお考えでしょうか。
A. 株価については、もちろん高い方が良いのは当然ですが、会社として持続的に成長していくことで、ROEなどの基礎的な数字もついてくると確信しています。まずは目標計画をしっかり達成していくこと、そして当社がどういうことをやっていて、これからやっていこうとしているかをしっかり発信し、ご理解いただく活動をもっと行っていかなければならないと強く感じています。

Q. 大株主の加藤清久さんはお父様になられるのですか。また、19歳の時に入社されたと思いますが、どういった経緯で入社されたのか教えていただければと思います。
A. 加藤清久は私の父親です。入社の経緯ですが、本当は違うことがやりたかったのですが思うようにいかず、少し人生に悩んでいた時期でした。たまたま父親から、東京の専門学校に行けば良い商売ができるという話があり、19歳の私にとって東京で一人暮らしができるのが最高のキーワードだったので、1年東京に行かせてもらいました。そこで多くの友人に恵まれ、いろいろな経験をさせていただいた後、約束通り入社して今日に至っているということです。

投資家の皆様へ

本日は皆様、本当にお忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございました。
私もこのような形で皆様方と直接お話しさせていただくのは初めてだったものですから、なかなかうまくお伝えできなかったことで反省する点が多々ございまして、誠に恐縮でございました。

今日を契機に、皆様方にアイサンテクノロジーのことを知っていただければと思います。当社は広小路通りから大津通りを経て、北に行くとコーワの向かい側に会社がありますので、そこにあるのだということをご覧いただけると幸いです。

また、私どもはこのような形で皆様方とお話しさせていただく場を積極的に設けていこうと考えております。成績が良い時でも悪い時でも、しっかりと皆様方とお話を聞かせていただき、いろいろと取り組んでいきたいと考えておりますので、今日を契機によろしくお願い申し上げます。

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