ROAとROEの使い方・覚え方
企業分析において欠かせない指標である「ROA」と「ROE」。これらの指標は企業の収益性や効率性を測る重要な物差しですが、混同しがちです。本稿では、ROAとROEの違い、それぞれの特徴、活用方法、そして簡単に覚えるコツを解説します。
ROAとROE:基本的な定義
ROA(Return on Assets):総資産利益率
- 計算式: 当期純利益 ÷ 総資産 × 100(%)
- 意味: 企業が保有する総資産(借入金や株主資本などすべての資金)をどれだけ効率的に使って利益を生み出しているかを示す
ROE(Return on Equity):自己資本利益率
- 計算式: 当期純利益 ÷ 株主資本 × 100(%)
- 意味: 株主から預かった資金(自己資本)をどれだけ効率的に使って利益を生み出しているかを示す
覚え方のコツ
1. 名称から覚える
- ROA: Assets(資産)に対するリターン → 「全ての資産」を使った効率
- ROE: Equity(自己資本)に対するリターン → 「株主の資金」を使った効率
2. 分母の違いに注目
- ROA: 分母は「総資産」(借入金も含むすべての資産)
- ROE: 分母は「株主資本」(株主から集めた資金のみ)
3. 視点の違いで覚える
- ROA: 経営者の視点(全ての資産をどう活用しているか)
- ROE: 株主の視点(投資した資金に対してどれだけ見返りがあるか)
数値の見方と活用方法
ROAの活用法
- 業種間比較は避ける:
- 製造業(工場や設備など資産が多い)は一般的にROAが低め
- サービス業(資産が少ない)は一般的にROAが高め
- 同じ業種内での比較が有効
- 目安となる水準:
- 一般的に5%以上あれば良好
- 10%以上あれば非常に優れている
- 経営効率の指標として:
- 保有資産に対してどれだけ効率的に収益を上げているか
- 資産の肥大化なく利益を伸ばしているかを確認
ROEの活用法
- 投資判断の指標として:
- 一般的に8%以上あれば良好
- 15%以上あれば非常に優れている
- 過去の推移をチェック:
- 上昇傾向にあるか
- 安定しているか
- 高すぎるROEに注意:
- 過度な借入(レバレッジ)で無理に高めている可能性
- 25%を超える場合は財務構造の確認が必要
ROAとROEの関係を理解する
ROEを分解してみる(デュポン分析)
ROEは以下の3つの要素に分解できます:
ROE = 売上高利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ
ここで:
- 売上高利益率 = 当期純利益 ÷ 売上高
- 総資産回転率 = 売上高 ÷ 総資産
- 財務レバレッジ = 総資産 ÷ 株主資本
この関係を理解すると:
- ROAが低くてもレバレッジ(借入金の活用)でROEを高くできる
- ROEだけが高い企業は借入依存度が高い可能性がある
実践的な使い方
企業選別での活用
- 第一段階: ROEで収益性の高い企業を選別(例:ROE 10%以上)
- 第二段階: 選別した企業のROAを確認し、資産効率も良い企業を絞り込む
- 最終段階: 財務安全性(負債比率など)も確認し、バランスの取れた企業を選ぶ
投資スタイル別の重視点
- 成長株投資家: 高いROEと安定したROAの成長を重視
- バリュー投資家: 業界平均より高いROAを持つ割安株を探す
- インカム投資家: 安定したROAを持ち、高配当を出せ