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[質疑応答パートの文字起こし]オーケーエム(6229)IRセミナー 2023.12.15開催

2023.12.15に開催しましたオーケーエム(6229))IRセミナーの質疑応答部分の書き起こしになります。

■■■受注残は右肩上がりに増えているように見えますが受注高は横ばいです。生産キャパ的に上限なのでしょうか、それとも好採算案件に絞って受注できているということでしょうか。

□□□受注残に関しましては、前期の第4四半期は、建築市場における全国圏での工事の谷間の影響による落ち込みで、受注残が減少したように見えます。しかし、その後回復しており、受注残は過去最高の40億円を超え、現在も増加傾向にあります。

ご心配いただいている生産キャパの問題ですが、当社のIRでも発表させていただいた通り、一部の生産調整を実施していました。これは、当社の外注先の縮小によるもので、新たな外注先を導入する計画を立てていましたが、軌道に乗らず、夏場の1~2ヶ月ほど生産調整を実施しました。

しかし、現在は生産調整を解除し、キャパの維持・拡大に向けてさまざまな施策を実施していますので、生産キャパ的には問題ございません。また、高利益の案件に絞って受注しているというお話ですが、これは間違いではありません。利益の高い案件を選別して受注しているという部分も並行して行っており、売上、収益、受注残ともに、現段階では潤沢に推移しています。

■■1つお伺いしたいのですが、とても利益の高いお仕事を選んで受注をしているというお話がありました一方で、先ほどの説明で、韓国や中国の競争が激しいという話もありました。この2つは両立できるものなのでしょうか?

□□当社は韓国と中国を成長市場として捉えており、一定のシェアを確保していく必要があると考えています。しかし、コストだけで競争しているわけではありません。当社は韓国と中国に事務所や工場、販売拠点を持っており、競合他社よりもサービスを重視しています。そのため、わずかではありますが、他社よりも高い価格で販売をさせていただいています。

■■■中国・韓国を含む競争具合はどうなっているのでしょうか、価格競争は激しいのでしょうか、品質などで差別化はできているのでしょうかという質問が来ています。確かに韓国メーカーが安いとなると品質でオーケーエムが勝っている(優れている)とかそういうイメージができるのか気になるところです。

□□□中国と韓国に関しましては非常に競争が激しい状況です。ただし特に船舶排ガス用バルブのビジネスに関しましては、MANエナジーソリューションズの認証制度をクリアしないと市場に参入できませんので、プレイヤーは非常に限定的です。その他の市場に関しましても、コストだけでは海外メーカーと勝負ができませんので日本流のサービス提供を柱にお客様とコミュニケーションしています。それときめ細かなサービスや他社以上の品質の維持、例えばシール性能であったり、細かなカスタマイズ対応であったり、そういったものを付加価値として提供させていただいた対価として、他社よりも高い値段で販売をさせていただけるというのが現状でございます。

■■■今後の造船市場をどのように見ていますか。その上で競争が激しい中、オーケーエムの業績はこの造船の影響をどのように受けるとお考えでしょうか。

□□□まず、世界の新造船の竣工量に関しましては、グラフに記載の通り、どのアナリストや市場に出ている情報も、かなりV字で回復するようなグラフになっていると思います。

この中には、足元の低炭素化、それ以降の脱炭素化、この需要も含まれてないというのが今のグラフになります。

低炭素化に関しましては、当社が取り組んでいる国内唯一の低温弁、船舶におけるLNG燃料用バルブであったり、既存製品のカスタマイズで対応予定のメタノール用バルブであったり、そういったものは色々今後も増えていくと思います。それが2030年ぐらいまでは続く見込みです。

それ以降に関しましては、水素、アンモニアの脱炭素関連の需要が増えてきますので、さらに上積みされると考えています。

新造船の竣工量が増えるため、船舶排ガス用バルブやLNG用バルブの販売も増えますし、脱炭素の流れで将来的にはアンモニアと水素向けも順当に増えます。実際にバルブの需要としてはこれ以上に伸びると予測をしています。

その中で当社としましては、競合他社に先駆けて製品を開発して量産化を進め、それを市場に展開していくところで、収益も含めて確保していきたいという事業戦略になっています。

■■■何社のライバル会社があるのでしょうか

□□□バルブメーカーは数多く存在しますが、私たちが主に手がけているのはカスタマイズまたは特定の用途向けのバルブです。これを主力商品とするバルブメーカーですと数十社になります。

■■■株式の流動性が低すぎます。解決策は考えていますか?

□□□流動性の低さは当社でも課題と感じています。現在の時価総額が100億円未満で、機関投資家の参入が難しい状況です。対策として、個人投資家向けに積極的にPRとIRを行い、直接的にリーチをかける計画です。具体的には、12月にはIFA向けの説明会を開催し、来年2月にはリンクスリサーチ共催の個人投資家向け説明会にも登壇予定です。今後も年に4〜5回程度、個人投資家向けの説明会に参加し、同時にメディア露出を増やすことで知名度向上と流動性の改善を目指してまいります。

■■■為替の影響を教えてください。

□□□基本的に、当社の取引の多くは円建てで行われています。中国元に対して1円円安になると、営業利益に約2500万円の減少の影響が出ます。ドルに関してはほぼ取引がなく、1円円安になると営業利益に約100万円のマイナス影響があります。弊社は海外にも販売展開しており、円安が売上や利益に良い影響を与えるとの期待をいただきますが、販売は円建てが多いため、中国からの仕入れの影響が大きい状況です。

■■■物価の上昇を意識することが多いですが、最近貴社もインフレの影響を受けていますか? そして、その対策として行っていることはあるのでしょうか。

□□□物価の上昇については、当社も大きな影響を受けています。主な要因としては、不安定な世界情勢や原材料、労務費、そしてインフラ関連の値上がりや燃料費の増加が挙げられます。これらの影響は非常に大きいです。インフレ抑制策として、調達先を国内にすることや、為替に影響されないような取り組みを行っています。従来は海外のサプライヤーが多かったですが、最近は国内のサプライヤーに切り替えるなど、様々な施策を実施しています。

■■■物価の変動を価格に転嫁することは難しいものでしょうか。

□□□当然、当社も価格転嫁を行っており、近年では2回の改定を実施しています。ただし、皆様もご承知の通り、材料のインフレスピードは非常に早く、すべてがお客様との合意に基づいて価格変更されるわけではありません。価格の交渉に関しても様々な形で行っており、早急に合意形成を進めて販売価格に反映させたいと考えています。

■■■昨日12月14日の「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」という開示を拝見しました。その中で、2023年3月期について「当社が想定する資本コストと同等程度の資本収益性を達成した」との認識が示されました。具体的な株主資本コストなどの数値があれば教えていただけますか。

□□□現時点では当社グループの資本コストは公表しておりませんので、具体的な数字については差し控えさせていただきます。ただし、弊社の資本コストの計算方法について簡単にご説明させていただきます。資本コストの計算にはCAPMとPERから逆算した想定値の2つの方法を用いており、これらの計算結果をレンジで捉え、当社グループのROEがどの程度になるかを分析・評価しています。昨日はこれらの情報を開示しましたが、今後の対応策については2026年3月期を初年度とする第2次中期経営計画の策定に向け、引き続き1年以上かけて検討を進めていきます。資本コストに関しては、最も重要なのは推定値を上回るROEを実現することであり、これを意識して今後も厳しい目線で資本コストの推定に取り組んでまいります。

■■■山武ハネウェル(現 アズビル)と1980年代に技術提携して販路を拡大したと記載されています。アズビルは自社でもバルブを作っていると思います。建設空調設備向けバルブについて、アズビルとオーケーエムの棲み分けを教えてください。

□□□山武ハネウェルは今のアズビルになりますけれども、これは1980年代から実は当社のバルブをOEMで供給させていただいているというものでございます。要は、山武ハネウェルブランドで当社の自動バルブを販売していただいているということです。棲み分けとしましては、アズビルが当社のブランドでバルブを購入していただく分野もありますし、逆にOEMで提供させていただいている分野のバルブもございます。そういった意味では、アズビルさんとは昔から様々な形で協業を行っており、お互いに協力しながら仕事を進めていると言えます。

■■■競争の激しい分野で大変ですよという話がありましたが、競争が激しい分野としては、韓国のバルブの話があります。しかし、他の分野では「競争がゆるい」と言ったら変な話になってしまいますが、そういった分野も存在するものか、全体的に競争が激しいと考えていいのでしょうか。

□□□分野としては、特に裾野も大きいですが、競争が激しい分野として挙げられるのは建築の市場などです。こうした分野においては非常に競争が激しく、プレイヤーが多く存在しています。反対に、競争が少ない分野としては、当社がカスタマイズでリードしている製紙や一部の製鉄などがあります。こういった分野では、お客様のニーズや課題をカスタマイズバルブで解決しており、その結果として高い価値と利益を生み出しています。

国別に言いますと、中国や韓国は先ほど述べた通り、世界競争の中にあり、全業種を通して価格競争が激しいとの認識があります。ただし、当社のカスタマイズバルブの分野においては、そのバランスを取りながら、利益を稼ぐ商品を提供しており、汎用品とのバランスを考慮しながら販売を拡大させています。

■■■決算説明資料の地域別売上構成を見ると韓国での売上が低下しています。この売上低下は競合他社の価格攻勢のためと考えていますが、この影響は韓国だけでなく、当然ながら中国や他の会社のところにも及んでいるのでしょうか。韓国における売上高減少傾向はまだ続いている状態なのでしょうか、それとも下げ止まったところなのでしょうか。

□□□結論から申しますと、下げ止まったかなとの認識をしています。韓国の競合メーカーからの価格攻勢が非常に強く、無茶な値段でシェアを取りに来ていると思います。実際に船舶排ガス用バルブの分野に関しては多分これ以上できないだろうというぐらいの値段を提示しており、これは続かないと見ています。生産キャパ的にも、競合他社の売上は上がっているものの、収益が横ばいもしくは低下しているという状況です。したがって、この分野への攻勢は続かないと考えています。

従いまして、韓国の売上高の傾向に関しては下げ止まる見込みです。韓国のシェアについては、様々なコストダウンの取り組みや生産地の変更などを戦略として今後検討していく予定で、韓国市場において巻き返しを図ってまいります。

■■■船舶排ガス用バルブの昨年度のシェアは何%ぐらいなのでしょうか。

□□□昨年度の船舶排ガス用バルブのシェアは約50%弱ほどで、今年度は40数%となっています。この減少の要因としては、韓国の競合他社の価格攻勢によるシェア低下が挙げられます。昨年度は韓国での当社シェアはトップでしたが、今年度においては価格の急激な低下があり、当社のシェアは30%ほどに落ち込んでいます。また、中国向けの一部に向けて生産を開始しましたが、お客様の要求事項の変更により、シェアが昨年度より若干下がっている状況です。これらの要因から主に韓国のシェアが低下し、昨年度から比べて10%弱ほどシェアが減少しています。

ただし、この状況は一時的なものかもしれませんし、中国市場を含めて韓国のシェアの奪還に向けて日々努力しています。したがって、将来的にはシェアを挽回できると考えています。

■■■無茶してシェアを取りに来ようとしている韓国のメーカーは1社なのか、それとも韓国のメーカーがたくさんあり、非常に競争が激しい状況で価格攻勢をかけているという認識でいいのでしょうか。

□□□シェアを取りに来ている韓国のメーカーは1社です。この分野には参入障壁があり、どこのバルブメーカーでも参入できるというわけではございません。韓国には認証を受けている企業が2社存在しており、この内の1社が無茶な価格設定を行っています。もう1社は市場にあまり重要視されておらず、現状では参入できていない状況です。韓国においてはシェアを取りに来ている1社と当社のほか、10%くらいのシェアを持つヨーロッパのメーカーが参入しており、この3社でシェアを分け合っている状況です。

■■■韓国のメーカーに対する対抗策として、考えられていることはあるのでしょうか。例えば、新しいバルブの開発など、そういったものもあるのでしょうか。

□□□まず1点目、船舶排ガス用バルブの対抗策としては、今はほとんど日本で作っているのですが、中国子会社でも同じバルブを作っています。ですので、日本で作るよりは中国で作るという方法で、生産地を分けて、船舶排ガス用バルブについては製造を進めていきます。2点目は改良版の開発によるコストダウンです。これらの施策を進め、低価格の韓国メーカーに対して対抗をしていきたいと考えています。

■■■LNG、水素、アンモニアについて書かれていますが、アンモニア向けのみ目標設定がされているのは、どのような理由があるのでしょうか。

□□□アンモニアに関しましては、2030年以降に向けてすでにいろいろな形で実証試験が進んでいる市場になります。そのため、アンモニアの方が水素よりも事業化が早いというイメージで、具体的な数値で示すことができます。水素に関しましては、公表はしていませんが、社内的には目標値もしくはその想定する需要の予想はさせていただいています。しかし、具体的なデータが足元にございませんので、公表は控えさせていただいています。

■■■中期経営計画では多くの会社が売上と利益の両方を目標値に掲げている認識ですが、この図を見ている限り、売上のみを目標にされていると思いますが、その理由はどのようなものでしょうか。

□□□こちらの表には書かせていただいていませんけれども、実際のところ中期経営計画としては利益も増加の計画で出させていただいている次第です。今後の中計の目標値の開示に関しましては、IR担当と十分検討させていただいた上で開示していきたいと考えています。

■■■工場見学をたまにしているようですが、株主もしくは投資家を対象とした工場見学の予定はありますか?

□□□現時点では、株主・投資家の方々向けの工場見学は予定していません。現在は、例えば販売代理店の営業担当の若手の方や、数年前のコロナ前には、従業員の家族を対象とした工場見学などを実施してきています。

ただし、今後につきましては、株主・投資家の方々により当社社を知っていただき、ファンになってもらいたいと考えていますので、当社の工場を見学していただくことで、より当社の事業についての理解を深めていただけると考えています。来期すぐにとはならないかもしれませんが、今後検討していきたいと考えています。

■■■滋賀県だから行きにくいことや、計画しづらいというようなことはないのでしょうか?

□□□当社の工場を見学していただく場合、スライドを映していただいている東近江工場と、そこから車で10分くらいの距離にある当社グループのマザー工場の日野工場がございます。日野工場は、最寄り駅からもなかなか徒歩でアクセスが難しく、参加される人数にもよりますが、規模が大きくなるにつれて、マイクロバスを借りるなど、準備が大変になるところもあるのかなという想像はしています。

■■■ありがとうございます。確かに、マイクロバスを借りると、遅れてくる人が出るなど、準備が大変そうなのはありそうですね。

■■■オーケーエムは歴史のある会社だと認識していますが、2020年に上場されたのは何か考え方に変化があったのでしょうか?

□□□考え方に変化があったというよりも、上場に関しては2020年にやろうと決めたわけではなくて、過去2回ほど上場のタイミングがあったのですが、それを見送ってきたというのが正しいところです。当社は、社会に貢献するということも社是の1つに入れています。その創業時の思いを含めた形で、実際に具体化したのが2020年の上場という形です。創業当初から、社会に様々な形で広く貢献していくためには、上場が一つの変革期になると考え、今に至るまで努力を続けてきました。2020年にそれが具体化されたというわけです。

特に変化があったということではなく、創業時の思いからずっと上場したいと考えており、変化はありません。

■■■クローバー通商は御社の筆頭株主との認識ですが、保有方針などでご存知でしたら教えていただきたいです。

□□□保有方針につきまして、IR担当として詳細に把握しているわけではないのですが、クローバー通商様は当社の創業家の資産管理会社ですので、基本的には中長期で保有される方針だと認識しています。

■■■オーケーエムの社名は創業者の奥村様から取られたものだと思うのですが、なぜ最後のLかRがなくなったのでしょうか。素朴な疑問です。

□□□旧社名が奥村製作所で、奥村という苗字から取って、その頭文字である「OKM」を旧社名の時から愛称として使っていました。社名変更の際に、その認知度が非常に高かったので、そのまま社名に採用しました。

当時の社員も愛称として「OKM」を使っており、また、ローマ字の3文字にしたいということもあったため、3文字の「OKM」に決定しました。

確かに、今思えば「R」や「L」を入れればよかったかなと思います。しかし、当時はそのような判断になったということです。

■■■生産体制の拡充や工場の新設投資の計画及び考え方について教えてください。有価証券報告書を見ても、どの程度の投資なのかわかりづらいので、より明確に教えていただけたら嬉しいです。

□□□投資に関しては、日野工場の老朽化設備の入れ替えや、東近江工場の低温弁組み立てラインや検査ラインの増強、試験流体である液体窒素の設備拡充などに重点的に行われてきました。計画の一部は、資料の42ページに記載されています。第1次中計では投資金額が記載されており、製品開発がメインの投資となります。また、SFA(営業支援ツール)や生産管理システムの入れ替えなど、DXの技術を活用した効率的な営業、生産に向けた投資も行われます。さらに、設備の増強や既存製品の改良も計画されています。

■■■今、インフレとは別の観点で船舶自体の価格が高騰しているという流れがあります。造船所がいっぱいで、高い値段でも船を作ってくださいという状況です。このような状況での価格転嫁は容易なのでしょうか。

□□□船舶を作る上で、最も価格に影響を与えるのは鉄です。日本の国内の製鉄所は大幅に規模を縮小しており、材料が非常に高くなっています。

当社のバルブも、造船向けの市場では2回ほど値上げを実施しています。しかし、船の価格は、底の底まで来ていたのが、ここ2年ほどで大きく回復したというのが正しい認識だと考えています。

需要でいえば、リプレイス需要が出てまいりますので、韓国をはじめ、中国、日本も直近の2年ほどはすべての船台が埋まっています。現在、2026年度の船台が埋まろうかという状況でして、それ以降の価格に関しては、鋼材などの主機材やバルブを含む補助材の値上げを想定した価格設定を、国内外の造船所とともに行っています。

■■■船を受注した後、オーケーエムのバルブを買うという流れになりますが、船ができる何年前、何ヶ月前にオーケーエムのバルブを買うかは決まっていますか。

□□□造船各社とは、年間契約ベースで契約をしています。そのため、案件ごとに値段を決めるのではなく、年度単位の価格を提供しています。

例えば、2026年度の船を契約するもとになる予算は、造船所側でも先々のコストの上がり幅を見込んで、今の新造船の価格に織り込んでいます。

実際に足元の価格は、当社のバルブが大きく影響する部分も多くあります。そのため、過去の実績をベースに、年間契約をしています。

何カ月前かというと微妙なところですが、案件ごとに決めているわけではなく、年間契約で決めています。

■■■先ほど、新燃料の話がありましたが、現段階で燃料の方向性が定まっていないように思うのですが、環境圧力による燃料転換期は早まるとお考えでしょうか。

□□□国際海事機関(IMO)の排出規制目標値の前倒しにより、2050年にGHGの排出規制がゼロとなります。排出量がゼロの燃料としては、LNGやメタノールではなく、アンモニアと水素の2択になると考えています。

ただし、完全なゼロエミッションにはならないかもしれず、CO2の取引によって、現状の燃料を低炭素燃料と組み合わせて使うケースも出てくるでしょう。

足元では、水素やアンモニアだけでなく、LNGやメタノールも引き続き使われるでしょう。しかし、いずれにせよ2050年にはゼロエミッションにする必要があります。そのため、脱炭素化に向けた船舶燃料の転換期は従来よりも早まるでしょう。

IMOは、2030年までに脱炭素燃料の使用率を5〜10%とする目標も採択しました。つまり、2030年には最低でも5%の脱炭素燃料船が就航する、もしくはその契約がなされることになります。

これらのことから、脱炭素化の流れは早まると考えられます。

■■■先ほどの説明で価格改定を2回行ったとのことでした。価格改定はいつ頃行われたのでしょうか。また、価格改定の影響は大体いつ頃業績に現れるのでしょうか。

□□□時期的としては、昨年度の7月と、そのさらに1年前の7月に、2回の価格改定を行っています。これは、定価の改定という形になりますので、標準価格の改定です。

実際のところ、価格転嫁については、ある程度の合意形成が行われており、また、日々流通する汎用品についても、ある程度即日から価格転嫁できています。

しかし、先ほどお話しした年間契約品の、船舶向けや、船舶排ガス用バルブなどの、足が長い製品については、まだ売上には転換できていない部分が若干ございます。今期、第4四半期以降にかけて、徐々に収益には寄与してくるという部分が一部ございます。

年間契約については、結構足が長い製品がございますので、カスタマイズバルブの価格改定については、これからというところです。

■■■先ほどの説明では、韓国の競合企業が無茶な価格で販売し、シェアを奪っているということでした。一度シェアを奪われてしまったら、次の販売機会を得られるのか、また、シェアを奪い、販売機会を得て保守料金で稼ぐという選択肢はありますか?

□□□これはよく言われる戦略ですが、シェアを取るために初期投資で損をし、後で利益を得るというビジネスモデルは、当社でも一部採用しています。戦略に応じて使い分けています。この船舶排ガス用バルブのビジネスについては、保守としては5年に1回最低でもドックでバルブを分解するという部分がありますので、そういうビジネスモデルも選択肢の一つです。韓国市場では、競合他社と競争していますが、戦略として初期投資で利益を若干減らし、アフタービジネスで取り返すという戦略でコストを下げるという選択肢もあります。また、利益を追求するだけではなく、継続したビジネスとして、シェアを守ることも非常に重要です。そのため、利益を稼ぐ部門と、ある程度の数量を稼ぐ部門を並行して戦略に組み込み、販売展開しています。今後もこのビジネスは継続し、市場環境や競合の状況に応じて、当社の立ち位置と今後のビジネス展開を考慮しながら、さまざまな手を打っていきたいと考えています。

■■■参入障壁についてお伺いします。素人目線では、品質対応、価格戦略、特許ラインナップ拡充によるシェアの確保などを考えることができる。競合他社にシェアを奪われないために利益を確保するために、どのようなことを重視して、どのような戦略で参入障壁を形成したいとお考えでしょうか。

□□□一般的に言われる品質と特許、ライセンスなど、さまざまな参入障壁を構築する可能性はありますが、参入障壁を作るのは、どちらかというと今から新しく生まれる市場だと考えています。

船舶排ガス用バルブのビジネスに関しても、業界でどこよりも早く満足度の高いサービスを提供させていただいており、約10年前の2013年頃から、MANや国内大手造船メーカーと協業させていただいています。

参入障壁の組み方としては、その製品を開発してリリースするまでに、戦略を構築して作っていくということになります。特許以外の参入障壁はそれほど長く続きませんので、そこをクリアして競合は増えてきます。最終的には品質やサービス、価格などの競争になっていくのではないかなと思っています。

その中で、アフタービジネスを見据えた形でも、採算性と量のバランスについては市場環境を鑑みて展開していかなければなりません。その辺に関しましては、ぜひご期待をいただければと考えています。

■■■滋賀県本社という立場から、地方企業ならではの優位性を感じることはありますか。地方にいるからこそ、官公庁との協力関係や人材募集補助金の申請などにおいて、相対的に有利になっていると感じることはありますか。

□□□一概には言えませんが、相対的に地方には、住みやすさや、子育てしやすい環境、都会の喧騒から離れて働きたいというニーズなど、優位性があると考えられます。また、官公庁との連携も、都市部に比べて密接であり、熱心な支援を受けられるというメリットもあります。

採用に関しても、滋賀県野洲市にある本社は、京都・大阪からの通勤も可能です。また、一部の工場は、都市部から離れた場所にありますが、通勤バスの運行など、採用を不利にしない施策を打っているところもあります。

このように、地方企業である優位性は、人材の確保や、補助金の申請など、さまざまな場面で活かすことができます。

■■■上場した2020年以降、どのようなメリットを感じていらっしゃいますか。

□□□メリットとしては、以下の3点が挙げられます。

①広く認知されるようになった。
②上場企業としての責任や求められることが明確になった。
③世界を相手にビジネスができるようになった。
また、安定した経営を続けるためには、施策や戦略をスピーディーに実行していく必要があるという緊張感も感じています。しかし、その緊張感をポジティブに捉えて、従来の業務のやり方を見直し、成長につなげていきたいと考えています。

■■■過去2回上場を見送られたとのことですが、その背景を教えていただけますでしょうか。

□□□1980年代に店頭公開を目指しましたが、バブル崩壊による景気後退の影響を受けて、上場を断念しました。2000年代に再び上場を目指しましたが、ITバブルの崩壊やリーマンショックなどの影響を受けて、上場を断念しました。2018年には、船舶排ガス用バルブの売上が急激に伸びたことや今後の成長ストーリーを描けることにより、成長資金を調達するために、再び上場を目指しました。しかし、2020年に新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、上場を数か月延期しましたが、2020年12月に上場を果たすことができました。

■■■先月28日の日本海事新聞によると、来年の新造船市場は商談が減速し、受注は前年比1割減少すると予想されています。これは、27ページの赤線の上昇とは異なるため、少し戸惑っています。

□□□こちらの記事は国内の話ではないかと思いますが、船価としては過去最高を記録しています。各造船メーカーが今商談する船は2027年以降に建造するため、今後の需要や材料価格、市場環境などの予測が難しいため、受注を慎重に検討しているようです。船舶の需要はありますが、約3年分の受注残があり、焦って受注する状況ではないため、短期的には受注が減少する可能性もあります。今後はウクライナ情勢などの政治的不安要素もあり、様子見の姿勢が続くと考えられます。

肌感覚としては、今後も船舶の需要は伸びていくと考えています。それに加えて脱炭素化の流れもあり、新たな需要も生まれてくるでしょう。そのため、船舶市場には、さまざまな形でビジネスチャンスが生まれると思っています。

■■■工場で働く従業員の数は、日野工場が117名、東近江工場が12名と、大きく異なります。この違いについて教えてください。

□□□この違いは、両工場の役割の違いによるものです。

日野工場は、設計、加工、組立の全工程を担っています。また、生産管理や品質管理などの間接部門も置かれています。

一方、東近江工場は、組立と検査の2工程を中心に担っています。

具体的には、

日野工場では、以下の役割を担っています。

設計:バルブの設計
加工:バルブの部品の加工
組立:バルブの部品を組み立てて製品にする
生産管理:生産計画や生産状況の管理
品質管理:製品の品質を管理

東近江工場では、以下の役割を担っており、船舶排ガス用バルブとLNG用バルブの2つの製品を生産しています。

組立:日野工場で加工された部品を組み立てて製品にする
検査:製品の品質を検査する

このように、日野工場は、設計から検査まで一貫した生産体制を整えている一方、東近江工場は、組立と検査に特化した生産体制を整えています。

■■■受注が積み上がっているのは、仕事はあるが人手に問題があるという話だったと記憶していますがそうでしょうか。

□□□受注が積み上がっているのは、人手不足で処理できていないというわけではありません。一部は今年の夏ごろからですが、生産調整を行った時期もありました。しかし、受注が積み上がっているのは、処理できなくなっているわけではなく、お客様からのニーズが大きく、大口の案件が増えたというのが現状です。採用については、募集はしていますが、工場の立地などもあり、人材がなかなか補充できません。ただ、その部分については、DXや最新の加工機械の導入など、人が関わらなくても良い形で物を作る方向性にシフトしています。そのための投資も拡大して進めています。

■■■韓国の売上が減少しており、その中でも現代重工業の売上が下がっています。これは現代重工業の仕入先変更の影響でしょうか?また、価格競争を行っている企業がアプローチを行ったという理解でよろしいでしょうか?それとも現代重工業自体の韓国国内の競争力が落ちているのでしょうか?

□□□韓国の売上は現代重工業が大部分を占めており、その売上が減少しているのは事実です。そのシェアが以前は50%でしたが、今期では30%に低下しています。現代重工業の仕入先変更により、シェアが入れ替わったという状況であり、その結果、発注量が減少しています。最後に、現代重工業の韓国内での競争力が低下しているということはありません。同社はトップシェアを誇っており、韓国内では非常に高いシェア率を持っています。これはエンジンを含め、造船の建造においてもトップ企業です。物流としては非常に多くの需要があり、同社は現在、LNG船を多く作っています。そのため、世界の造船の牽引役となっています。したがって、競争力が低下しているとは考えられません。

■■■投資家の皆様へ

□□□ 本日は多くの個人投資家の皆様にご参加いただき、誠にありがとうございます。週末の夜分、仕事を終えた後のご参加ということで、お疲れのところ当社の説明会に熱心に耳を傾けていただき、さらに多数の質問もいただき、感謝申し上げます。当社としては、今後もIRを通じて、当社の考え方と事業の方向性を共有させていただきます。そして、お客様の課題を解決するというミッションを追求し、収益を伸ばしていけるように事業を拡大していきたいと思います。引き続き、応援のほどよろしくお願いいたします。本日は、ありがとうございました。

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